2008年02月29日

小市民と日常の謎 〜原作・米澤穂信/作画・饅頭屋餡子「春期限定いちごタルト事件(前)」

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原作小説を読んでいたので、漫画版も買ってみた。


恋愛関係でも依存関係でもない「互恵関係」にある、小鳩くんと小佐内さん。
彼らの目指すところは「小市民」。目立たず騒がず、平穏無事に毎日を暮らすことが信条。
そんな彼らの前にも、時にはちょっとした事件が起きたりする。
人が死なないミステリ小説のコミカライズ。


まず思ったのは、小佐内さんがかわいい! ということ。
小説の表紙イラストもかわいかったけど、こちらもなかなか…! セーラー服の上に重ねた大きめのカーディガンがかわいい〜。変装でおしゃれしてるのもかわいかった。
ひらひら揺れるおかっぱ髪も、現実にはありえない髪型だけどかわいい。
あと、小鳩くんも美形!
健吾は思ったよりも渋い! 全然いけるけど!(何がだ)


冒頭の小鳩くんがみた夢のシーン、「きみ ちょっと鬱陶しいんだよね」は強烈だった…。
この描き方はかなり良いなぁ〜。ほんと、鬱陶しいもんこいつ(笑)
ここは正直、原作よりも「つかみはオッケー」な感じだと思った。
作画の方は新人さんらしいけど、漫画の描き方がこなれていて上手な印象。センスあるんだろうなぁ。


他に、エピソードのひとつ「For your eyes only」のラストも、なかなかすごかった。
確かこれは原作の通りだったと思うけど、ここまで潔く終わっちゃうのも見事な感じ。
ミもフタもないんだけど不思議な余韻が後をひく。
原作の魅力をとてもよく生かしてると思う。


タルトを載せてた自転車をパクられたときの小佐内さんの反応もステキだった。
かわいそうすぎる…。
後編での「小佐内さん覚醒」が待たれるところです。


最近流行りの可もなく不可もないといった感じの絵柄だけど、画面がスッキリしていて見やすいし、多くの人に好感を持たれそうな作風です。私も好きだ。
ストーリーを作る力はどうなのかわからないけど、コミカライズ作品に出てしまいがちなぎこちなさ、唐突さやわざとらしさがなく、「漫画」を描く能力に長けている作家さんなんだと思う。
原作を知らなくても全く問題なく楽しめる作品だと思います。
後編が楽しみ。



※ちなみに
原作小説の感想は書いてませんが、その続編「夏期限定トロピカルパフェ事件」の感想はよろしければこちらです。
ニックネーム 三森紘子 at 00:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 漫画・さ行

2008年02月28日

とてもアツい日 〜田中モトユキ「最強!都立あおい坂高校野球部」15巻

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「甲子園ってなんなの…?」

「すべて叶う場所なんだ。」



※雑誌じゃなくてコミックスだしいっか〜と思ってサラッと書いちゃってますが、試合結果のネタバレを含みますのでご注意。


これも買い逃してた!
正確には発売日に買いには行ったのですが、行きつけの書店の新刊コーナーには見当たらず、「あれ?今日じゃなかったんだっけ?」と首をひねりながら同じ日発売だった「お茶にごす。」だけ買って帰宅。
アマゾンを見ても間違いなく出てるみたいだし、おかしいなぁ〜と思いながら後日もう一度探してみたら、新刊コーナーではなくサンデーコミックスの棚のところに平積みにされていました。
あーよかった見つかって、やれやれ…ってうおおい! これも新刊だから! せめて発売当日くらいは新刊コーナーに置いてあげてー!


そんなこんなで15巻。
いやいやいやいや! 熱かったー!
これに勝てば甲子園という地方大会決勝戦、幼なじみのコーちんが相手という因縁の対決。
さらに、今夏で野球をやめる予定の右京、伸之助のケガ、限界を超えまくったキタローの投球と、どれもこれも熱くなるしかない要素が満載の、東王学院戦がいよいよ決着。
絵柄もまさしく入魂といった感じで荒々しく力強くなってきています。私は昔のほうが好きだったけど、としつこく言っておくけど。


キタローを始めとする幼馴染メンバーはスーパープレーヤーだから、「スゴイねぇこの子たち」って思う止まりなんだけど、そこまで才能のない今井や瀬川たちがいいプレーをすると、「おおおおお〜!」となります。
キャプテン今井はミスをしちゃったりもするんだけど、それを引きずらずに続くピンチでは瀬川と息ピッタリの連携で延長戦に持ち込むための大事な大事なアウトを取るんだ!


それをテレビで観ていた元・野球部員の長妻が、「奇跡」「マジ奇跡」と騒ぐ友人に向かって「奇跡ってゆうなっ!!!」と怒鳴るシーンはよかった。
自分よりも下手だったかつてのチームメイトが、大事な試合の土壇場でこんなプレーをしている。
それはまぐれでも何でもなく、ずっと練習を重ねてきた彼ら自身の実力なんだと、気づいた長妻は涙する。
「好きなことにすら夢中になれなかった」自分。「オレ…何やってんだよ…」とつぶやく長妻。
とても好きなシーンでした。一話分まるまる使ってのエピソード。作者さん描きたかったんだろうなぁ。


登場したての頃はちょっぴりミステリアスで元気な美少女だったのが、すっかり恋する乙女と化してきた千葉ちゃん。
千葉ちゃんとキタローは、いつのまにか普通に両想いになってるっぽいけど、どうなるんだろう(マサハルが不憫…!)。
デッドボールくらってヨレヨレになりながらも、「じゃ…勝ってくる!!」と告げてマウンドへ戻ろうとするキタローかっこいいなちくしょう。


最終打席、コーちんに余裕がなくなってきて、いい顔になってきた。
こういうすました顔は崩れてからが本領発揮!(意味不明)
「鈴ねえを甲子園につれてってやるよ」
幼いころ、口ぐちにそう言ったキタローたちからひとり離れたところにぽつんと立って、コーちんはその一言を言うことができなかった。


(なぜ…言えなかったんだろう? なぜ自分は一人なんだろう?)
「キタローたちに勝つことで自分の道を正当化したい」。「自分があいつらよりマシだって思いたい」。
そのために、甲子園に行くのは自分たちでなければならない。
コーちんの本心が切ないです。
ほんと、同学年だったらこんなことにはならなかっただろうに、生まれるのが少しだけ早かったってだけなのにな。


それにしても、裏表紙の千葉ちゃん、泣き顔なんだもん! 「ええっ、もしや…!?」と思ってしまった。
それだけにこの巻のラストには震えがきました。
最後のキャッチが瀬川だったのもすごくうれしかったぁぁ!


プレーしてる人、応援してる人、誰もかれもが生き生きとした顔で、一瞬先の勝負の行方を見守る。
そういう緊張感が紙面にみなぎっていて心地いい。泣くよ泣くよ。これは泣くよね。
とても暑い日、「彼が夢を掴んだ瞬間」。
次の舞台は、甲子園。


でもこの人たち、本気で満身創痍なんだけど…
こんなボロボロでこの先闘えるんだろうか? 闘えるんだろうな。この漫画はそういう漫画だもん!
精神が肉体を凌駕するのですよ。そういう意味では正しい少年漫画だなぁという感じ。


おお振りばっかりヒイキしてるけど、これもすっごく面白い野球漫画だと思う!!



1〜10巻の感想はこちら
11巻の感想はこちら
12巻の感想はこちら
13とんで14巻の感想はこちら
ニックネーム 三森紘子 at 23:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 漫画・さ行

2008年02月27日

五万ヒット御礼

御礼といいつつ、すいません何も出てきません。
ただお礼を言うだけです。これがほんとの御礼!(笑)


ごご、五万だって。


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ニックネーム 三森紘子 at 23:16| Comment(6) | TrackBack(0) | 日記とか

2008年02月25日

おお振り感想(アフタヌーン2008年4月号)その1



美丞大狭山戦、ついに決着の第54回です…!
今回ほどページをめくる手が震えた回はなかった…!


☆ネタバレ長文死ぬほどご注意ください!☆
というか、シャレにならんほど長くなったので分割しました!(え?いつものこと…?)





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ニックネーム 三森紘子 at 23:26| Comment(4) | TrackBack(0) | おお振りアフタヌーン感想

2008年02月24日

目では見えない 〜杉本亜未「ファンタジウム」2巻

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ちょっと大人っぽい良くんが表紙の第2巻です。


北條の尽力で、いやいやながらも中学校へ通うことになった良。
難読症の良は、通常学級の他に通級指導教室も通うことになる。
字が読めないためにテストは追試だらけ、でもペン・スピニング(ペン回しのこと)がべらぼうに上手い…と、思いっきりクラスで浮いてる良は、あからさまないじめの対象にされつつも、渡辺という友人もできる。
その頃、テレビでは「スピリットリーダー」と呼ばれるサカキシンという男が人気を博していた。
イベント等でマジックを披露していた良の元にある日、サカキシンとの共演でテレビ出演の依頼がやってくる…


本当に、見れば見るほど良くんはいいです。目がいい。目がいいなぁ。
「ナウなヤング」とか言い出したので笑った。誰に教わったのそんな言葉…。
同年代の男の子と楽しそうにしている姿はかわいいし、頭から水をぶっかけられても「正気でいられたらきっと俺は たぶんものすごく ものすごく強くなれるはずだ!」と思える時点でもうあなたは強いです。
それって「これだけは譲れない」というものがあって、その気持ちが毛程もブレたことがないからなんだろうなと思った。
五十嵐も業が深そうだ…


大きな挫折を経験せず、ひなたの道を歩いてきた北條さん。
けれどもそれは、知らず知らずのうちに楽な道を選んで生きてきたということでもある。
良に対する「俺はおまえみたいにはなれなかった」という思いは、心から信じる何かを目指す良のような生き方を羨む気持ちの裏返しなのだ。
だからこそ、良に懸ける思い、その生き方を曲げないでほしいという思いは強い。
でも良は、信じていても人は去っていくことを、短い人生経験の中で知ってしまっている。


目をつぶって1・2・3と数え、目を開ける。
そんなことをしても目の前の現実は変わらない、決して奇跡は起きないことをわかっていながらも願わずにはいられない痛みと。
目を開けると、そこに北條さんが立っていたときの嬉しさと。


…こんなシーンで2巻が終了なんてニクすぎる演出です。
名作だ。完結してないのに気が早いかもしれないけど、名作になると思うこれは。



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杉本さんの描く横顔は美しい。
後頭部の丸みも好みだなぁ〜。


1巻の感想はこちら


ところで、作中で北條さんが運営している良のサイトは実在します↓
http://ryomagic.com/
デザインがすごくキレイ! かわいい良くんもいっぱい見られる素敵なサイトさんです。
ニックネーム 三森紘子 at 18:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 漫画・は行

万華鏡の幻想 〜皆川博子「倒立する塔の殺人」

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わたしたちは、切り花なのだ。空想――あるいは物語――という水を養いにしなくては枯れ果ててしまう。しかも、その水には、毒が溶けていなくてはならない。毒が、わたしたちの養分なのだ。



作中人物の一人・三輪小枝の独白は、そのままこの作品を象徴しているように思える。


皆川博子の「甘美な毒を含む幻惑的な物語世界」(著者紹介文より)は、陶酔して浸りきることができるときもあるけど、毒にあてられてリタイアしてしまうときもある。
そのときの精神状態に左右されやすい気がする。(代表的な作品を何冊か読んだことがあるだけですが)
図書館の新着コーナーでこの本を見つけ、久しぶりに読んでみようと思った理由のひとつは、強く目を惹く美しい装丁。ひとつは、「倒立する塔の殺人」という魅惑的なタイトル。もうひとつは「ミステリーYA!」という中高生向けのシリーズから刊行されていたこと。
皆川博子が少年少女に向けて書いた小説ってどんなのだろう? という興味から借りて帰りました。


舞台は戦時中・戦後のミッション系女学校。
母と妹を失った阿部欣子は、同級生の三輪小枝の家に間借りすることになり、彼女から一冊のノートを渡される。
手書きの美しい蔓薔薇模様で彩られたタイトルは「倒立する塔の殺人」。
それは、三人の少女が回し書きした小説と、彼女らの手記から構成される物語であった。


設楽久仁子から上月葎子へ、上月葎子から三輪小枝へと受け継がれた物語は、未完のまま。
物語の結末、そして上月葎子の死の真相を読み解いてほしいと、小枝は欣子に言う。


阿部欣子、三人の手記、小説内小説「倒立する塔の殺人」、それからもう一人の人物と、視点は幾重にもかさなりひろがり、あらすじ紹介にあるとおり「万華鏡のように美しい」幻想的な世界が作り上げられている。
小花模様(ジャスミン?)の型押しがされた遊び紙や中表紙も、ところどころにあらわれる挿画も、世界観の構築に一役買っている。
さらに、現代ではあまり使われなくなった美しい日本語で書かれた物語。
ああ、これは、誰か早熟な少女の宝物として鍵のかけられた抽斗にしまわれていてほしい小説です。


ミステリ仕立てのストーリーにもしっかりと決着がつき、それでいて幻想的な雰囲気は壊されずそのままにある。
敗戦とともに価値観が一変した時代背景も、「S」という少女どうしの秘めた関係も、私にはなじみの薄いものなのだけれど、限定された誰かのために文を綴るという行為は今も昔も、同じ悦びに満ちているのだなと思う。
交換日記、流行ったもんなぁ…。くだらないことばかり書いていたけど。


表紙の三人は、三輪小枝・上月葎子・七尾杏子の綺麗どころかな?
美しい彼女たちの「切り花」のような生き方にも憧れを見るけれど、大地にがっしり根を張って生きる阿部欣子のたくましさもとても好きだ。
ニックネーム 三森紘子 at 17:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 活字・た行

生活するって素敵 〜羽海野チカ「3月のライオン」1巻

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ポストカードがついてました。レジでしおりをもらいました。
お久しぶりのウミノ先生の新作!


主人公はプロ棋士の高校生・桐山零。
棋士仲間や、ふとしたことから知り合った三姉妹とのふれあいが話のメインになっていきそう。


事故で家族を亡くし、引き取られた先でもうまく息をすることができず一人暮らしを始めた零は、いつも寂しそうな目をしている。
暗く重くなりがちなテーマだけれど、全体的に優しくあったかい(そしてコミカルな)雰囲気で引き込まれます。


それに三姉妹、あかりさん・ヒナちゃん・モモちゃんがとにかくかわいらしい。
あかりさんの程よくポチャッとした二の腕が素敵…ヒナちゃんが着てるような格好を毎日したい(年齢的にアウトですが)…モモちゃんは…モモちゃんは、ああとにかく好き…
古くて懐かしい日本家屋で、ニャーたちと暮らす三姉妹の生活。
ふくふくもっちりしたニャーたちが、ごはんをくれくれと足にまとわりついてくれるのです。
私も行きたーい!! ここで暮らしたーい!!


冒頭に出てくる食卓のカレーライスがとっても美味しそう。
写実的に描かれているわけでもないのに、どうしてこんなに美味しそうなんだろう?
キレイに盛りつけられたサラダとか…リンゴの絵のついた麦茶ポットとか…リスの絵のマグカップとか(モモちゃんのかな?)…。
朝ごはんの納豆まぜまぜ、おじいちゃんがやってる「三日月堂」の三日月焼の袋詰め、栗の皮剥き。迎え盆と送り盆の意味。
本筋とは関係ないような生活のディティール。でも実は、これらこそが本筋なのではないかと思う。
これは「いろいろな事情を持つひとびとが、いろいろなことを思いながら生活していく物語」なのだと思います。
だから将棋のことが全くわからなくても、全然問題ない。(知ってたらもっと楽しいんでしょうけど)
そんな他愛ないけれどかけがえのない日常を、ずっと見ていたくなる。


送り盆の日、三姉妹宅で夕飯をごちそうになった零は、あかりさんにごはんの残りを詰めたものを持たせてもらいます。
それを抱えて帰路を歩く零くんのモノローグ。


――帰り道

風の強い橋の上

おなかに抱えた
弁当が

まるで

小さな生き物のように
あったかかった……




ウミノ先生は詩人だなぁ…


そこに息づいているもの、
あかりさんたちの営みの一部を持って帰った零くん。
冷蔵庫に入れて冷えても、それはほこほこといつまでもあったかいに違いない。


毎回の扉絵が続きものになっているのも良いです。それもモモちゃんがアイスを落としちゃってゆずってあげるとか、ささいなことが題材なのが良い。
素敵ですよ。生活するって素敵なことですよ。
願わくばこの優しい場所がずっとあり続けてほしい。
喜びも悲しみも、みんなで飲み込んで分かち合って。


個性的な棋士仲間の面々も楽しい。
特に二階堂くんはいいですなぁ! もっちりむっちり!



※作者さんつながりで
「ハチミツとクローバー」の感想はこちら
ニックネーム 三森紘子 at 17:01| Comment(2) | TrackBack(1) | 漫画・さ行

2008年02月22日

でも青い 〜西森博之「お茶にごす。」3巻

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部長さーん!
部長さんの優しさに包まれた!


前巻から引き続いて小学三年生のまークンと山田の出会い話。
まークン&山田VS悪人一家という感じですな。
この悪人一家が清々しいほど悪人でむしろ笑える。


殴られてもやり返せず泣いちゃうような普通の少年だった山田が、まークンに感化されて変わっていったのは、良かったのやら悪かったのやら…今や電子レンジのようにすぐ熱くなる男だからな。
でも、「俺だってもう謝らねェ。」と山田が決意したあたりは読んでてドキドキした。


そして、西森先生はイラッとくる悪人を描くのがおじょーずですけど、イラッとくる善人(腹黒系)を描くのもおじょーずですね!
まークンの生涯のライバル(になるらしい)、樫沢光輝が登場。
顔よし、姿よし、頭もよくてケンカも強く、家もお金持ち、まさにパーフェクト超人。
当然男からも女からも大人気なのだけど、な〜んかイラッとくる顔をしているのです。うさんくさい。
部長さんに色目は使うは、自惚れや腹黒さが透けてみえるはで、誰かコイツの鼻をあかしてくれはしないかと思わずにいられない。


やってくれたのはまークンでした。
「ヒゲ濃いな、オメー。」というまークンの一言で、樫沢の順風満帆だった人生は一変します。
今まで誰も気にしてなかったけど、一度気がつくと確かに濃い! というか青い! 顔の下半分が!
この「顔の下半分が泥棒ヒゲのイケメン」という絵的表現が、かなり強烈でちょっとだけ樫沢が哀れ。後ろに(笑)マークのついた「哀れ」だけど(笑)


「カッコイイ、でも青い」と、周りの人間に笑われ続け、最初は何でもない風を装っていた樫沢だが、じわじわとボディに効いてきていたようで、ついににっくきまークンを陥れようと画策する悪者に成り果てます。
この先彼は小者キャラになるのか、お笑いキャラになるのか。再び二枚目キャラに返り咲いたときは称賛の拍手を送りたい。
でも、こんなのがライバルだったらイヤだなぁ、なんか、粘着質そうで。


自分で納得いかないかぎり、人に頭を下げられないまークンも、部長さんのためなら嫌いな人間相手にも頭を下げる。
確実に育っていってるんだなぁ、部長さんへの愛が。
ガキの頃から悪魔だの魔族だの言われていた、というまークンに対して、「かわいそうに。大変でしたね…私は決して言いません。」と、手に触れながらまっすぐな瞳をして語りかける部長さん。
…そりゃ好きになるわなー!!
可憐で素敵な部長さん。部長さんのようになれる方法が知りたいです。


でも、夏帆ちゃんのこらえ性がないところも好きなのだ。



1巻の感想はこちら
2巻の感想はこちら
ニックネーム 三森紘子 at 23:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 漫画・あ行

2008年02月21日

翡翠色の瞳した少年 〜びっけ「JADE」

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たまたま寄った本屋で偶然見つけなかったら、買い逃してたな〜。あぶないあぶない!
私にとって「じっと眺めているとだんだん呼吸が早くなっていく類いの絵」を描くこの人の漫画はとりあえず即買いです。
別に珍しい画風でもないし…飛びぬけて上手なわけでもないし…同じような絵を描く人いっぱいいそうなのに、何でこの人の絵だけが特別なのかなあ…。
表紙の少年を見るだけで既にうへへへとヨダレをたらしそうになりつつ、カラー口絵にもうっとりだよもう…!


天才人形職人だった祖父が孫のフランツに残したのは、少年の姿をした一体のからくり人形だった。
「宝石のように貴重なもの」を意味する「GEM」という名で呼ばれているその人形はしかし、眠ったまま動かない。
目を覚まさせるには、制作者が設定した起動アイテムが必要だという。


というわけで、表紙の可愛い少年・翡翠は人形でした。
でも人形人形しているのは最初だけで、動きだしてからは普通の人間と変わらない見た目になる。
脳天にナイフが刺さっても血は出ない。(フランツを瓦礫から守ったときは額から液体を出してたけど…あれは何? オイル?)
翡翠のビジュアルはいちいちツボでやばいです。セーラーカラー! 半ズボンにハイソックス! うなじが儚げ! さらにマウントポジションで「おまえのものだ」とか上目使いで「おいていくな」なんて言われ・た・日・に・は・も・う!!


人形、それも人と見紛うほど精巧な機械人形を題材にした話というと、どこか倒錯的でお耽美な匂いがぷんぷんいたします。
でもこの作品の場合、絵柄と作風のせいか、それほどいかがわしい雰囲気にはなってません。
なんというか、健全。人形の目玉だけを蒐集したり、少年人形で着せ替え遊びをしたがる変態さんたちも、あまり変態ぽくは見えない。
そこが良いとも言えるし、逆に物足りない人は物足りないかもしれない。


やっぱりどうにもこうにも残念なのは、おはなし作りが上手じゃないことだなぁ…。
導入部分がなんだかとっつきにくい。展開がちょっと乱暴な印象を受ける。
翡翠にはメロメロだけど、語り手役のフランツやエリーゼにあんまり魅力を感じない。おじいさんの意図や人柄も見えてこないし…。
魅力的なパーツをぽんぽん出してきてるのに、なんでそれを掘り下げてくれないのー! って思うところがたくさんあった。
プロローグをやり終えたところで完結したような感じだしなぁ。続編もありそうな雰囲気だけど。


そういうおはなし作りの面がもっとこなれてきたら、そりゃあもう手放しで愛を叫びながら布教しまくるのですが。
…文句を言うのは期待してるからなのですよ…!
作品として一番輝きを放っていたのは、最初に読んだ「真空融接」かもしれない。(あくまで個人的感想。特に下巻)
応援してるのでこれからもがんばってほしいです。


ところで、翡翠の次にメロメロなのは紅さんです!
凛々しいお顔にハートを射抜かれた。ドレスにブーツ! 乗馬服! もうだめだー!



※作者さんつながりで
「真空融接」の感想はこちら
「獏〜BAKU〜」1・2巻の感想はこちら
ニックネーム 三森紘子 at 20:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 漫画・さ行

2008年02月19日

プロのお仕事 〜原作/乙一・脚本/坂東賢治・ノベライズ/相田冬二「KIDS」

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映画のほうは観ておりませんし、今のところ観に行く予定もありません。
だって観に行ったら、「で、お前はどっちが目当てなの。玉木か、徹平か、それとも両方か」という声がどこからか聴こえてきそうで(たぶん自分の内なる声だ)なんかそれに耐えられない…。
ああ両方さ! なにこの最強タッグ。最強じゃん。
だから逆に、絶対観てやるものかとか思ってしまう。どういう思考回路なのか不明ですが。


なのにノベライズのほうは買った。何故かというと「キサラギ」のノベライズを手掛けた相田冬二さんの著作だからです。
※ちなみに「キサラギ」小説版の感想はこちら


内容についてはさて措くとして(映画観てないからね。)、今回もやはり相田さんにしか書けない小説になっていると思います。
アボカドバーガーを食べる玉木宏が百獣の王ライオンのたてがみを体感しているなんてこと、シナリオには絶対に書いてなかったに違いない! …いや知らないけど!
キサラギのときと同じような感想になるけど、この物語をいったん自分の中に取り込んで咀嚼して、自身の言葉で新しく語り直しているような印象を受ける。


映画のノベライズってたぶん、セリフをおこしてト書きを地の文に書き直すだけでも一応の体裁はつく。
実際そんな感じのノベライズ小説を読んだこともあるけど、それだとあくまでその映画を観た人しか楽しめないんじゃないかと思う。映画の付属品、グッズ的な感覚で。
小説を映画化や漫画化する場合は、視覚という新しい要素が入るから違いがわかりやすいけど、映画や漫画を小説化する場合、ただ原作を文章に変換するだけではとってもつまらないと思うのです。
同じならわざわざ読む必要ないもん。
となると、どれだけ書き手の人のオリジナリティを出せるかというのが重要になってきます。


そういう点で、相田さんの書かれるものにすごく好感を持ちます。
すでに一度作り上げられている作品をどう料理するか、どう味付けするか。
映画の付属品ではなく、「小説」として単体で面白い作品にするため、どう工夫するか。
そういう意思、つまりはプロ意識と呼べばいいんだろうか? それを感じてうれしくなる。
そして、他人の作品を料理しながら、実はこれ自分のことを書いちゃってるんじゃないのかな? と思う部分も多々あってちょっとニコニコしてしまう。


あれ、ほんとにキサラギのときの感想と同じようなこと書いてる…。
ボギャブラリーが貧弱なんだな私…。


ここまで偉そうなこと書いといてアレですが、なにしろ映画を観てないので! トンチンカンなことを言っちゃってたら本当にすいません。
映画のほうは…う〜んやっぱり…観、ないかなぁ…
地上波で放送したら観ようかなぁ…
相田さんの文章が読みたかっただけなんです。ほんとすいません、こんなんで。
ニックネーム 三森紘子 at 22:29| Comment(6) | TrackBack(0) | 活字・か行

2008年02月18日

欲しい 〜安達哲「バカ姉弟」1〜5巻

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ああっかわいいよう。かわいいかわいい。
ほっぺた、おでこ、そしておなか!
膝に乗せたい。でもきっとおとなしく乗ってはくれず、物陰から様子を窺われるのがおちだろうけど。


愛らしい表情と形状、底知れぬ潜在能力を持った双子の姉弟(三歳)が、ご近所に見守られながら暮らしていくお話。
両親は仕事で家をしょっちゅう空けている。でもべらぼうにサバイバル能力に長けた二人はすくすく育っている。


バカ姉弟と呼ばれているのは何でなんだろう。そこまでバカじゃないよ。とってもいい子たちだよ。
人の痛みをわかり、自分の気持ちを殺すことのできる子たちなのだ。
きっと仏さまか神さまが子どもの姿をして地に降りて来なすったのに違いない。七歳までの子どもは神さまのものだって昔からいうし。


プチシューの話(最後におねいがまた買ってくるのがいい)とか、抱月の話とか、お母さんが「えらい」と電報をくれる話とか、酔いつぶれてほっぺたがだらんだらんになる話とか、戯れるイルカとおねいを見て「い…生命(いのち)……」と思わず心中で呟く大人の話とか、おねいの色が落ちちゃう話とか(「愛敬のある黒人」超かわいい)が好きです。
何かと世話を焼いてくる、シズラーこと志津香さんのことも煙たがってはいるけど見放してはいないところがいい。


最後にご姉弟が成長しちゃったのだけはちょっと納得いかない。なんかさびしかった。
若干、弟くんの扱いが悪くてかわいそう。
引っ越ししたけど隣町でした、ってオチのところで終わっておけばよかったのに。なぜ成長させる必要があったんだろう?
というかそもそもこの話は完結してるんだろうか?


この漫画、仕事場の方に貸していただいたのですが、無性に手元に置いておきたい気持ちにかられます。
離したくな〜い! ご姉弟の仲睦まじい姿をずっと見てたいよ。
欲しいなあ。自分で買っちゃいたいくらいだなあ。
ああっかわいいよう。それしか出てこないんだよう。



感想が短いのは、昨日のマ○バオーの記事で気力体力を使い果たしたからでは決してない!
だってとにかくかわいいんだもん。かわいくて笑える。最高。
ニックネーム 三森紘子 at 23:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 漫画・は行

2008年02月17日

この世紀の一戦を目に焼きつけろ 〜つの丸「みどりのマキバオー」全10巻(文庫版)

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んあー、ついに揃えたのねー!


と、たれ蔵のモノマネのひとつでもしたくなる。やっと念願叶ってマキバオーをオトナ買いできました。
ほんとは通常のコミックス版がほしかったんだけど(カバー絵が好きだから)、残念ながら重版未定のようなので、文庫版を買いました。
まあ経済的にも物理的にも、文庫版のほうがコンパクトだからいいか。


今頃になって何故マキバオー!? という感じだけど、ハマったときが欲しいときなのだからしょうがない。
それに、続編「たいようのマキバオー」が現在連載中なので、あながち旬でないとも言えないのではないでしょうか、ね? ね?
かくいう私も、「たいよう」がきっかけで「みどり」を読み出したクチです。
アニメ化されて大人気だった10年ほど前、アニメも観てたし、テレビの競馬中継までいきなり観だすくらいハマったけれど、そういえば原作を全巻通して読んだことがなかったなぁ…と思い。
さっそく漫画喫茶で読んで号泣(個室でよかった)。これは買うしかない、と思い今に至ります。


有名な作品なので、読んでる人はとっくに読んでるだろうし、読んでない人はたぶんこれからも読まないだろうから、今さら「皆さん読んで!!」とオススメしたいわけではありません。
「こんなん読んだ!面白かった!」と吐き出したいだけです。(それを言うなら他の記事もみんなそうなんだけど)
ただ、この名作の絵柄だけを見て「下品そうなギャグ漫画」と誤解してしまってる人がもしもいたら、とってもとっても人生損をしているように思います。

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ニックネーム 三森紘子 at 18:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 漫画・ま行

2008年02月16日

さらに大きくフライハイ 〜寺嶋裕二「ダイヤのA」9巻

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表紙の3人、みんな顔が凶悪だ(笑)


何よりもまず、小学館漫画賞受賞おめでとうございま〜す!
賞を獲ったって獲らなくたって作品の質は何も変わらないけれど、好きな作品が評価されたということは純粋にうれしいですなあ!


夏の地区予選を、順調に勝ち進んでいく青道高校野球部。
勝つチームがいればもちろん、その陰には敗退するチームがいる。
試合終了の礼のあと、握手をしながら負けたチームは勝ったチームにエールを送る。
「がんばれよ!」「絶対甲子園行けよ!」と。


実際の高校野球でも、野球漫画でもよく見られるシーンですが、その潔さに改めて気付かされる。
くやしくて仕方ないだろうに、泣きはらした目をしながらも、清々しい表情で自分たちの夢を相手に託すのです。
そのことに驚き、思いを受け止め、彼らの分までがんばることを決意する沢村。
勢いあまって「3年間おつかれさんでしたぁ」と大声を出し、味方どころか相手にまで引かれるほどに。


沢村という主人公はまっすぐすぎるほどまっすぐなキャラクターなのだけど、それが嘘っぽく見えたりウザく思えたりしないのは、こういうちょっとした部分で読者が共感できるからじゃないかなぁと思う。
そういう沢村の人柄は1巻からずっと変わらないし、どうやったって憎めない人物だ。好きだなあ。


監督が沢村に「将軍」と呼ばれたのが似合いすぎていた。


四回戦の相手は、「精密機械」と称されるピッチャー・楊舜臣が率いる明川学園。
(監督すら気づいてない相手の弱点に気づいて意見するぐらいだから、「率いる」ってのが一番ふさわしいような気がします。)
エースナンバーをもらいながらも、ケガのためこの試合はおそらく出番がないであろう丹波。
そんな丹波に次々声をかける同学年のチームメイトたちが泣かせます。
丹波、本当にがんばってほしい! いずれ訪れるだろう出番のときに、今出せる全力を出して戦ってほしい。
ていうか丹波でかっ! 伊佐敷と何センチ離れてんの?


整列のコールで走り出す、両チームのベンチメンバー。
見開きのシーンはビリビリくる。夏の熱気と興奮と。
始まるんだ! という雰囲気が出ててとてもいいシーン!


初めて経験する東京の熱さにバテ気味な先発・降谷がどこまでがんばれるか、それから楊の実力がどれほどのものなのか、というのが今のところの勝負のキモになりそう。
がんばれ、青道!!


ちらっと出てきた市大三高の監督、カタカナ英語まじりの喋り方(ルー語か?)がちょっとうっとおしいけど、「さらに大きくフライハイ」には笑ってしまったので、記事タイトルにさせていただきました。
この作品自体もさらに大きくフライハイすることを願って(笑)


巻末の番外編がかわいくてなごんだ。プリン食ってる沢村かわいい。
「火の車」「水の泡」のTシャツは、倉持のお手製だったのか…
伊佐敷が読んでる漫画のタイトルが「ラブ☆魂」なのに笑った。そういえば少女漫画好きだったねこの人は。


前髪下ろしたクリス先輩がまた見られてうれしい!
でもずっと下ろしててほしいわけではないんだな。たまに見られるからよいのだ。



1〜4巻の感想はこちら
5巻の感想はこちら
6巻の感想はこちら
7巻の感想はこちら
8巻の感想はこちら
ニックネーム 三森紘子 at 15:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 漫画・た行

2008年02月14日

最近のほん 2月14日

ううー、最近調子が悪いんじゃないかい269gさん。


厳しい寒さが続いておりますね。
先週末はさすがにうちのあたりでも雪が降ったし、実家はもちろん降りつもったし、もっと寒い地域ではもっともっと降りつもったことでしょう。
でもあんまり風邪をひきそうな感じではないな。
きっと、体の方も万全の態勢をしいてるんだと思う。ウイルス入れてたまるかと。
秋から冬への移行のときが一番ひきやすいです。




最近よんだほん


・ほしよりこ「僕とポーク」

たろちゃんの「いらないよー」がよかった。かわいいなー。
ギャグとして描いてるのか、真面目に描いてこうなってるのかよくわからないのが、つかみどころがなくってとても気になる。
あとほしよりこさんはものすごく絵心のある人だと思う。


・乾くるみ「リピート」

「『イニシエーション・ラブ』より驚けます」と帯に描いてあるほどではなかった(そもそも全く種類の違う驚きだと思うんだけど…)ものの、SF要素の入ったストーリーはとっても面白かった。
にもかかわらず、「これ好き!」と思えなかった。
一番大きな理由は、主人公をはじめとする登場人物に感情移入ができなかったことだと思う。何だか全然共感も同情もできない。(わざとそう書かれているのかもしれないけど)
自分がフィクションを読むとき、何を基準に評価しているかというのが、この作品を読んで改めてわかった気がする。
私は「好きか嫌いか」という感覚的な部分に一番重きを置いてるみたい。
これもすごい面白いと思うんだけど、好きではないんだよな…。


・田村由美「7SEEDS」12巻

安吾たちが出てきた。
これが初登場だったら彼らの言動に憤りを覚えただろうけど、これまでの経緯を知ってるから無理もないかと思っちゃう。
ナツの成長がうれしい。友人が「花みたいに優等生すぎるのはあまり好きになれない。ナツのほうが好き」と言ってたけど、ちょっとわかる。


・石塚真一「岳」6巻

三歩も万能じゃないから、助けられるときもあれば助けられないときもあって、でも三歩はいつのときも変わらない。助けた人、助けられなかった人に言葉をかける。また山においで、生きててくれてありがとう、よく頑張った――
人間としてある種の完成形なんだなぁ。
そんな三歩を形作った人たちの中の一人、稲葉先生はいいこと言うなぁ。
本当に味わい深いよい作品です。


・福本伸行「賭博黙示録カイジ」

弟の蔵書から。
コンビニで売ってる廉価版で読んだので、コミックスの何巻かはわからないけど、人間競馬の話までは読みました。
めちゃくちゃ面白いやんけ…!
なんで今まで読まなかったんだろう、って十中八九絵のせいですけどね。やっぱり絵で読まず嫌いしても何もいいことないってわかったよ。
生きるか死ぬかの賭博に臨む極限の状況を描くことで、そういった一部の人間だけではなく現代人すべてにも共通する「社会の縮図」みたいなものがあぶり出されているのはすごい。他人事だけど他人事に思えない。
絶対続き読みたい。カイジがどうなるのか気になるし!
カイジはしょっちゅう泣いているけど、ずっと泣き続けてほしいと思う。慣れてしまわないでほしい。


・高屋奈月「幻影夢想」全5巻

前の記事でもちらっと書きましたが、やっぱりいいなぁと思って実家で再読。
初期の作品ということもあってか、(特に最初のあたりは)展開が大味な印象もあったりする。
でも、ストーリーが本筋に入ってからはものすごく引き込まれてしまう。
途中、ほんとに辛いことがいろいろあるんだけど、それもこれも全部飲みこんで、願い続けながら生きた人たちの救いに満ちたラストは圧巻です。泣く。
それからこれは和服を着た人たちがいっぱい出てくる話なので、各話の扉絵が雅びやかでめっちゃ綺麗! こういう雰囲気の絵をまた描いてほしいなぁ!




そう言えば今日はバレンタインでした。
この時期になるとスーパーとかで88円くらいで売られるハート型のチョコレート、結構おいしい。
ニックネーム 三森紘子 at 22:41| Comment(0) | TrackBack(0) | いろいろ簡易感想

2008年02月12日

実家の蔵書整理をした日

一日にどれくらい更新できるかなと思ってやってみたのをひとまとめにしました。


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ニックネーム 三森紘子 at 23:50| Comment(4) | TrackBack(0) | 日記とか

2008年02月11日

「ヤサシイワタシ」と私 5

全くネタバレではない





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ニックネーム 三森紘子 at 09:45| Comment(2) | TrackBack(0) | ヤサシイワタシ

2008年02月10日

「ヤサシイワタシ」と私 4

お久しぶりのこのシリーズ
非常に非常に非常にネタバレ




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ニックネーム 三森紘子 at 21:41| Comment(0) | TrackBack(0) | ヤサシイワタシ

2008年02月09日

「強敵」と書いて「とも」とよむ 〜誉田哲也「武士道シックスティーン」

0209

ああ〜、これはまんま少年バトル漫画だな! と思った。


主人公は、剣道をやっている女の子二人。
一人は、新免武蔵を心の師と仰ぎ(何しろ愛読書は「五輪書」だ)、「敵の軍門に下る」というような言葉を日常語として使う、勝つことが全てと信じて疑わない香織。
もう一人は、勝ち負けで物事をはかるのが嫌で、上達していくことが楽しいと思っている、ちょっと天然入ったマイペースな早苗。
自他共に強さを誇っていた香織は、まったく実績のなかった早苗に中学の大会で負けてしまう。
雪辱をはらさんと、早苗の学校の高等部に入学する香織。
二人は剣道部にて再会するのだが、早苗は香織が思っていたような強者には見えず…。


天然の天才と、それに執着する自信家の実力者。
この図式は、バトル漫画によくある「主人公とそのライバル的存在」の関係そっくり。
自分を負かしたくせに勝敗にこだわらずフニャフニャしている(ように見える)早苗に対し、香織は「もっと本気になれ」「お前の力はそんなもんじゃないはずだ」「あたしに勝ったやつには強くなってもらわないと困る」と、事あるごとにつっかかる。
いやー、王道だなぁ。しかし二人とも女の子ってのが新鮮。


考え方が決定的に違うせいで、なかなかわかり合うことのできない二人。
でも、お互い衝突しながら触れ合う中、また周りの人々との交流の中で、次第に二人の心境は変わっていく。
兄の仇と思ってきた先輩の強さを目の当たりにし、勝ってそれが何になるんだろう? 勝つことに何の意味があるんだろう? と、唐突に剣道というものがわからなくなった香織。
団体戦に出ることで、自分の負けがチームの足を引っ張ってしまうことに思い至り、勝ちに貪欲になることを意識し始めた早苗。
今まで見えていなかったものが見えてくるという心の成長。
そして、二人は再び竹刀を構えて対峙する。
剣を交えることが何より楽しいと感じられる、好敵手として。


まさに「強敵」と書いて「とも」とよむ関係!
だからこの小説は、青春ものであり、スポーツものであり、友情ものでもある。
こういう王道なストーリーはやっぱり熱さや瑞々しさ、そしてラストの良さが大事になると思う。
ラストに向けてグアーッと盛り上がっていくあたりで、初めて出会ってからの二人の様々なシーンが思い起こされてついほろりとしたり。
なにより、真剣勝負をする二人が本当に楽しそうで、最高の相手に出会えてよかったね、とエールを送りたくなった。


表紙のイラストがかわいいな。
絵の邪魔にならないように、タイトルロゴのほうがよけてくれてるのがなんかいい。
ところでこのお話は高校入学前後から始まるので、少なくとも最初のあたりは二人とも「フィフティーン」の可能性が高いと思うんだけど…まあどうでもいいことです。
大人だけでなく少年少女にも読んでほしい作品。
ニックネーム 三森紘子 at 20:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 活字・は行

2008年02月08日

まあるい笑顔 〜谷川史子「くらしのいずみ」

0208

懐かしいなぁ谷川史子!
その昔私はりぼんっ子だったので、りぼんでよく読んでました。
他に載っていたどの漫画にも似ていないふんわかした作風、半円状にわらう口元が醸し出すまあるい幸せ感。
久しぶりに読んでもそういうところが全然変わっていなかったので、旧友に出会ったときのように何だかうれしかったのでした。


だから私にとっての谷川史子はやっぱり「=りぼんで描いてたひと」というイメージで、これが青年誌に掲載されたことに激しく違和感がある。
読者層が増えるからそのこと自体は喜ばしいけれど、谷川さんが何を描いてもどこで描いても、それは「少女漫画」になると思う。
なのでこの感想は、断固として「少女漫画系」のカテゴリに入れることにします。


1話につき1組、合計6組の夫婦が登場する、オムニバス短編集。
幼馴染だったり、歳の差婚だったり、仮面夫婦だったりと事情は様々ですが、この先ずうっと続いていくはずの結婚生活、そりゃいろんなことがあるでしょう。
疑問を感じたり不安になったり衝突したり、気持ちが離れてしまうこともあるかもしれない。
でも、お互いがお互いと一緒にいるということを、ささやかだけどとっても贅沢な幸せと感じる瞬間もある。
まさしくそれは、暮らしの中に湧き出る泉のようなものなんだろう。


たとえば好きなひとが剥いてくれた不格好なリンゴを食べる佑子姉ちゃんの嬉しそうな顔とかを見てると、一番必要なのはコレだよなぁという気持ちになる。
登場人物がみんな、誰かのことを思っていて誰かのよろこぶ顔を見たいと思っていて、もうそれは素直にああいいなぁと思える。


「3軒目・高橋家」と「4軒目・矢野家」のお話がつながっていることに最後のページになって気づいたんだけど(遅すぎ…)、4軒目の後に3軒目を読み返すと色々と感慨深い。
「素敵な人を見つけ」るまで、長い時間がかかったんだねとか。
「1軒目・染井家」の奥さんの「一日でも夫より長生きしたい」という夢が切実さを帯びてきたりとか。


個人的に、3軒目の扉絵に出てくる高校生(?)のときの佑子姉にくらくらきてしまった。
↓コレ(笑)
0208
この重ためのおかっぱが何とも…たまりません!
谷川さんの絵だから表現できる、ちょっと野暮ったい感じの女の子の可愛らしさ。
多恵や佑一の幼なじみの女の子の、浮いたえりあしの描き方も好き。


同時収録の読み切り「早春のシグナル」は、結婚式を控えたカップルと、新婦の親友のお話。
スピーチのシーン、新婦+女のひとだったから感動的だったけど、もしこれが新郎+男のひとバージョンだったら、場は騒然となっただろうな…。と思った。
新郎がとてもいい人だったので癒された。


実は谷川さんのコミックスを買ったのは今回が初めてでした。
これを機に昔の作品を読み返してみようかなあ?
りぼんの別冊付録か何かに載ってた「両手でも足りない」という読み切り作品を無性に今一度読みたいです。
ニックネーム 三森紘子 at 22:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 漫画・か行

2008年02月07日

アナログスティック八つ裂き 〜空知英秋「銀魂」22巻

0207

続刊を買うことが、半ばライフワークのようになっている銀魂です。


そういえば、読んだ本ランキングの記事を年末に書いたとき、銀魂は候補にすら上がってなかったんだった。頭の端にすら浮かびませんでした。毎回発売日に買ってる熱心な読者なのに。不思議だ。
買ってるジャンプコミックスが銀魂とジャガーさんだけ、っていうのが特別変わってるとは思わないけど、ワンピースもブリーチも読まずになぜこの2作品だけを、という疑問は自分のことながらある。
せめてワンピースは一度通して読みたいと思っていますが48巻(以下続刊)か…長いな…


そんでこの22巻は、前巻の竜宮城の感動を返せと言いたいぐらいに下ネタ天国だ。
もうね8割が下ネタだからね。正直ドン引きだねコレ。「下ネタ」という感想しか出てこないワケですよ。(と空知先生の文体を真似てみたけど成功していない)
シリアスとギャグのメリハリ激しいのが銀魂だとわかってはいるけどね。
あと最近はオチを投げてるのが多い。


長谷川さんの「待っていろみんな、今すぐに行く!」のオチは好きだけど。
「今すぐに行」った後、誰も待ってないとわかってどうしたんだろうなぁ長谷川さん…と想像すると切ない。


最初と最後をすごいイイ話で固めてあるのは偶然ですか?
眉間のシワが取れた京次郎とか…
特に松原松子の話はいい…。8ページで泣かせるとは。
なにげに空知先生は泣かせるのが上手いというか、泣きのエピソードがバラエティ豊富なのですよね。
そして、体育教師の桂に違和感があまりないのが笑える。


困った、ほんとに感想が出てこない。
とりあえずキメるときはキメる銀さんカッコイイ!


次の巻も買うよもちろん!



1〜16巻の感想はこちら
17巻の感想はこちら
18巻の感想はこちら
19巻の感想はこちら
20巻の感想はこちら
21巻の感想はこちら
ニックネーム 三森紘子 at 21:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 漫画・か行

2008年02月06日

映画「陰日向に咲く」を観た。

「魍魎の匣」はそのうちそのうち…と思ってる間に観逃してしまったので、今度は上映してるうちにと思って観に行きました。
劇団ひとりの小説が原作の映画です。(小説の感想はこちら


ネタバレになってるかもしれないのでご注意。


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ニックネーム 三森紘子 at 22:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画

2008年02月05日

詠むことは祈ることに似ている 〜原作・枡野浩一/漫画・小手川ゆあ「ショートソング」2巻

0205

2巻で終わりましたねー。


原作の小説ではすっきりしなかったラストがどうなるのか気になる、と1巻の感想に書いたのだけど、漫画版ではそこまでのモヤモヤ感というものはなかった。
国友くんと伊賀さんがある意味ふっきれて新しい一歩を踏み出す、という点が強調されているからだろうか。
爽やかだ。絵柄の所為もあってか、たいへん爽やかだ。


でも若芽ちゃんのオチはカットされちゃってた。
あのオチで「若芽ちゃんのほうが一枚上手だった」ってことがわかるのに、これだと単に伊賀さんに失望されただけの存在になっちゃってて、ちょっと若芽ちゃんがフビンだった。


そんな失礼極まりない伊賀さんの、今巻のおちぶれ具合がすごくよかった。
自分だって舞子さんと結婚する気なんかなかったくせに、結婚話を出して「伊賀さんとわたしってべつにそういうんじゃないって気がしない?」って言われたときの伊賀さんのショックを受けた顔が最高! だった。(ザマーミロという気持ちも含みつつ)


でも、その後のギャグ顔のコマはなくてもよかったなぁ…
単に小手川さんのギャグ顔の描き方(白目に長方形の口)が好きじゃないからなのかもしれない。
あまりにオーソドックスすぎて、これだけ綺麗な絵が描ける方なのにギャグ絵は手を抜いてるように見えてしまって、その顔が出てくるたびにちょっと冷めてしまうのです。
そう、違和感だ…! マジメ絵とギャグ絵がうまく調和してない感じがするのだ。そんな風に思ってるのは私だけか? ただ単に好みの問題だろうか?
この方の他の作品は読んだことがないので知らないんだけど、ずっとこういう作風なんだろうか。閑話休題。


「ストーカーみたいだ」と自分で思いながら伊賀さんが舞子さんのアパートに押しかけたとき、彼女は中にいたのかいなかったのかはわからないけど、もしいたんだとしたら、あんな風にドアを叩かれたらそりゃ怖いよな…
二人っきりで会うの躊躇するのは当然だな…と思った。


やっぱり今回も、読むと短歌を作りたくなった。(実際に作るか、作れるかは別として)
口語の歌が好きです。自然な話し言葉なのに五七五七七の字数にぴったりはまってたりすると、すごい気持ちがいい。ぞくっとくる。


ああ、それにしても女の子が可愛かったです。
出会う子出会う子そんなに可愛いわけがあるか――! と心の中で叫ぶほどに可愛かった。
何だ上戸さん(マッサージ師)のあの可愛さは。



原作の感想はこちら
1巻の感想はこちら
ニックネーム 三森紘子 at 21:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 漫画・さ行

2008年02月04日

昨日の

昨日の伊坂幸太郎の記事が一部文字化けしてるのに後から気付いたので、修正しました。
「最高級」「最孫級」になってたりして面白かったです。
何なんだ最孫級って。



ハードだった1月が終わり、ようやく定時で帰れる生活に突入です。
がんばった…! 今までで一番がんばったんじゃないだろうか…!
平日にPCをさわれることがうれしくてしょうがないので、たくさん更新できたらいいなぁと思います。


仕事帰りにコンビニ以外でも買い物ができるって素晴らしいぜ…!
ニックネーム 三森紘子 at 20:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記とか

2008年02月03日

突抜頂点 〜伊坂幸太郎「ゴールデンスランバー」

0203

今から伊坂幸太郎の「ゴールデンスランバー」を誉めちぎりたいと思うので、ご了承願います。


こんなに早く読むことができるとは思ってなかった!
「むっちゃ読みたいけどハードカバーだし買えない、図書館で予約はしたけど順番待ちが長そうでいつになるやら」と事あるごとにこぼしていましたら何と、とある機会にプレゼントしていただきまして!
ダイヤの指輪もらうよりうれしいぞー!(本心) なんという果報者なのか私は。
「私の本当に今一番欲しいものを」っていうその気持ちがまずうれしい。


図書館仕様のビニールコーティングがされていないハードカバーを手にするのはずいぶん久しぶりのことで。
しばらく撫でたりさすったり眺めたりした後、おもむろにページを開き…一日で読破した。


ブラヴォー! ハラショー! エクセレーント!
面白い! としか言えなくて困っちゃう!!


「『伊坂幸太郎的に娯楽小説に徹したらどうなるか』という発想から生まれた、直球勝負のエンターテイメント大作」と紹介文にはあるが、まさにザッツ・エンターテイメント!!
読者を楽しませることだけに力を注がれた、最高級に魅力的な長編小説です。


仙台パレードの途中に首相が暗殺されるという大事件。その罪の濡れ衣を着せられた青柳雅春という男が、得体の知れない大きな陰謀から逃げようとする。簡潔にいうとそんなお話。
構成からしてしびれる。
まず第一部「事件の始まり」で導入部分を書き、第二部「事件の視聴者」で事件をテレビで外側から観ている人たちが書かれる。
そのあといきなり第三部「事件から二十年後」に時間は飛び、ノンフィクションライターの視点から事件について語られる。
そして、第四部「事件」でとうとう、当事者青柳雅春の、長い長い二日間の逃亡が書かれる。
彼がどんな結末を迎えたかは、ぜひその目でお確かめを。
第五部「事件から三ヶ月後」でしめくくられるラストは、切なくもあるし嬉しくもあるし、感無量でもある。


決して珍しくはない、むしろありふれた筋書きのこの物語がどれだけ面白いか、どんな言葉で表現しても陳腐になってしまいそう。
伊坂小説の醍醐味として、「張り巡らされた伏線」というものが筆頭に挙げられるけれど、ここでもそれは健在で、ビシッバシッと決めてくれる。
そうやってパズルのピースのように事象が当てはまっていくのを見るのは、本当にキモチイイ。
当人にしかわからないそれらのことを読者にもわかるようにしてくれて、ニヤニヤする幸せをくれる伊坂先生の手腕にはひれふすしかありません。
素晴らしすぎます。好きすぎます。


ロックな岩崎さんかっこいい。青柳のお父さんかっこいい。森田いいやつ。
ううん、登場人物一人一人挙げてっても、エピソード一つ一つ挙げてっても足りない。


とにかく、面白かったんだーーー!!! ってことを叫びたい。そこかしこに叫びたい。


そんなわけで、大大大満足の節分の休日でした。
今年の恵方は南南東!
ニックネーム 三森紘子 at 22:13| Comment(4) | TrackBack(2) | 活字・伊坂幸太郎

2008年02月02日

不器用な人びと 〜オノ・ナツメ「Danza[ダンツァ]」

0202

12月に出ていたこの漫画の感想を書くのはものすごく今さら、という感がある。
発売直後に買わなかった自分が不思議だ。なんで今の今まで買わなかったんだろう。


オノさんの漫画は、ディフォルメされた頭身の小さい人間で描かれたものと、八頭身の人間で描かれたものとの2パターンがあって、「Danza」はディフォルメバージョンの漫画だ。
どちらの絵柄もそれぞれ好きだけど、どちらのバージョンで描くかによってその作品のカラーというものがある程度決まってしまうだろうから、オノさんがどういう基準でそれを決めているのか興味がある。
頭の中に浮かぶイメージで決めるのかな? それとも、「この作品はディフォルメバージョンでやろう」とか考えたりするのかな。


いずれにしても怖ろしくセンスの良い人だなぁと思う。
切り絵のようでも版画のようでもある雰囲気のカラー絵と、シンプルな線で構成された無駄のない、それでいて濃密な時間が込められた本編と。
好きだな好きだな。
この前オノ・ナツメを一気買いしてった男の人がいて(basso名義のBL作品も取りこぼしてなかったのでちょっとびっくりした)、勝手に親近感を抱いたりした。ハマるとハマっちゃうよなぁ、この人の漫画。


絵だけじゃなく、話も良くって。
めちゃくちゃ月並みな言い方だけど、じーんときた。
あまり器用じゃない人びとがおずおずと関係を築いていく過程は、微笑んでしまうとともに涙があふれそうになりますね。


息子への愛情をわかりやすい形で表せないピッポやマーティン、娘の夫(アメリカ人)にどう接したらいいかわからない日本のガンコなお父さんなど、年長者の皆さんがかわいらしくも愛おしい。
すれ違いやわかりあえないことはそりゃあるけど、関わり合いたいという気持ちひとつ持っているのといないのとでは大違いだ。
人びとが持っているそういう気持ちのことを思うとちょっと泣きそうになる。なんでだろ。


こういう漫画が青年誌に載っているというのがとてもいいなぁと思うのです。女性誌じゃないほうがいい。
最後に収録されている「パートナー」は、長期連載シリーズとして改めて始まるらしいのでうれしい。
ニューヨーク市警が舞台のバディもの。やべーすごいおもしろそー。楽しみ。


オノさんの描くイタリア男性はとても素敵ですが、日本女性も負けないほど素敵だと思う。
そんなわけで、アメリカ人ホルと結婚したさちこさんがお気に入りだ。かわいい。
ニックネーム 三森紘子 at 19:43| Comment(2) | TrackBack(1) | 漫画・た行

良質な物語を読む幸せ 〜上橋菜穂子「精霊の守り人」

0202

友人が「面白いから」といって貸してくれた本です。
その友人が「面白い」と言ったものは大概が本当に面白いので、正直あまり興味は持っていなかったのだけど、それなら読んでみようと思った。
興味を持てなかったのは異世界ファンタジーというものがあんまり得意じゃないから。
ナルニアもゲドも指輪もいまだ読破ならず(ゲドは一作目だけ読んだ)、ポッターも途中下車してしまった身としてはややハードルが高い。
けれど、これは読んで本当によかったなぁと思いました。


凄腕の女用心棒・バルサが偶然助けた少年は、国の第二皇子・チャグムだった。
精霊の卵を宿しているために命を狙われるチャグムを守ってくれと母親から託されたバルサは、帝の放つ刺客や卵を食べようと狙う異界の魔物を相手に戦う。


主人公が中年の女性だというのがまず珍しいと思った。
それにしてもこのバルサはものすごく格好いい。こんなに魅力的なおばさんのキャラクターってあまり知らないなぁ。
数奇な運命に生まれつき、望まぬ戦いの人生を送るうち、戦いそのものがすべてとなっていったバルサの半生。
夜、囲炉裏の火を囲みながらバルサが己の生い立ちをチャグムに語る場面が好きです。
歳を重ねてこそのバルサの言葉に、心を揺さぶられてしまった。
長いですが、引用したいのでします。


「ジグロが死ぬとき、耳元でいったんだよ。父さん、父さんが犯した罪は、わたしが償うから安心して眠って、ってね。八人の人の命をたすけるからって。そうしたらね、ジグロは苦笑して、いったのさ。――人助けは、殺すよりもむずかしい。そんなに気張るなってね。
 ジグロは正しかったよ、争いのさなかにある人をたすけるには、別の人を傷つけなければならない。ひとりたすけるあいだに、ふたり、三人の恨みをかってね。もう、足し算も引き算もできなくなっちまった。――いまは、ただ、生きてるだけさ」



母親ほども歳の離れているであろうバルサのことが不意にいとしくなった、というチャグムの気持ちがわかる気がする。
疑似親子愛というのともちょっと違う気がする…バルサとチャグムの関係。
ジグロからバルサへ、そしてバルサからチャグムへと伝えられた何か。
チャグムの成長が頼もしく誇らしく、でもだからこそ別れの時は悲しかった。
旅がずっと続くはずもないとわかっていても、彼らの別れには胸に穴があくような寂しさを覚えた。
幸い続編があるし、また二人は出会うことがあるのかな? そのへんを確かめるために続きも読みたいと思います。


全体的な印象としては、「ザ・良質ファンタジーのお手本」という感じだった(自分の語彙力の無さにビックリだ!)。
淡々とした文章なのに臨場感がすごくて、カタカナの固有名詞がいっぱい出てきて「?」の波に一瞬流されそうになるけど、それでもなお読ませる力を持ったストーリーの確かさ。
児童文学だから、本当にわかりやすい言葉だけで書かれているのにもかかわらず、心に響くフレーズにたくさんたくさん出会う。
揺るがない土台を持っているからこそなんだろう。あとがきを読んでも、作者さんの揺るぎなさというものが感じられる。


アニメ化されたものを観たことはないし、その出来がどうだったのかも全く知らないけれど、これは確かに「映像で観たくなる作品」だと思う。
読んでいると、脳裏にありありと浮かぶのです。彼らの冒険と絆と成長の物語が。


あ、あと老齢の女呪術師・トロガイが好きだ。ばあちゃん、最高。
ニックネーム 三森紘子 at 19:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 活字・さ行

幾星霜 〜三浦しをん「桃色トワイライト」

0202

時々思い出したように三浦しをんのエッセイを読もうという気になる。
ネットで連載されているエッセイを本にまとめたこのシリーズ(タイトルは毎回違う)は、どれから読んでもいいし、どのページを開いても「三浦しをん」という人そのものが表れている。
というか表れすぎじゃないか。いくらなんでもぶっちゃけすぎじゃないですか、しをんさん。


小説のほうもわりと読んだけど、私はエッセイのほうが格段に好きだ。
直木賞とか獲るようなすごい小説を書かれているのだけど、でもやっぱりエッセイのほうが好き。
こういう文章が書けるようになりたいなぁ。といつも思う。


この「桃色トワイライト」は、図書館で見つけてパラ見したら杉本亜未の「独裁者グラナダ」の感想が書いてあったので、うれしくなって衝動的に借りました。
そうそう、「透徹とした世界」っていう言葉がぴったりですよね。そして鳴瀬のパンチパーマはすごかったですよね。
ホ○漫画がダメな人にもオススメのホ○漫画だと思う。表題作にはそもそもホ○が出て来ないし。
ちなみにわたくしめの感想はこちら


しをんさんの基本姿勢は、「好きになったら幾星霜」だという感じがする。(幾星霜の用法間違ってるような気もするけど…)
流行り廃りは関係なく、自分が「好き!」と思ったものをとことんまで愛し、極める。めったなことで心変わりはしない。
だからしをんさんにとって「漫画」は「趣味」ではないのである! 全力で読み、全力で愛するものなのだ!(著者紹介プロフィールに拠る)
素晴らしい。その境地に到達したい。


個人的に超絶共感してしまった箇所。
包丁で指を切ってしまったというエピソードに際し、


 切る前にちゃんと、「こんなふうにキャベツを持って包丁を扱うのは危ないな、気をつけなきゃ」と思ったんだが、思っただけでもう、「これだけ思ったんだから大丈夫だろう」と、つい油断した。
 私は、「突発的な事態」というのは、「想像もしなかったことだから突発的」なのだと思っている。そして、「すでに想像しえたような事態は、実現しないだろう」と考える傾向にある。



貴女は私ですか!!!


現実って結構、思った通りに事が運ぶこともある。
私は本当に、「これ、こぼしそうで危ないな」と思った物体をよくこぼす。わかってるのにこぼす。
小さい子どもか。小さい子どもならこぼしても可愛いけど、いい大人がこぼしてもそれはただの行儀の悪い大人だ。
いいかげん改めなきゃいけないな…切実に。
でも、寝る前に「寝てる間に大地震がおきたらどうしよう。おきませんように」って祈るのはやめないでおく。


新撰組大河ドラマとか、仮面ラ○ダーク○ガとかの今は懐かしネタも楽しめるこのエッセイを読んでも女子力はいっこうにつかないけど、妄想乙女力はちょっとぐらいつくんじゃないだろうかと思う。だってやたら楽しそうなんだもん。とにかく楽しそうに生きてるのがいいんだよ。
ニックネーム 三森紘子 at 18:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 活字・ま行