2008年10月05日

再読・恩田陸「木曜組曲」



法事で実家へ帰るのに電車の中で読む本がちょうどなくて、「木曜組曲」を引っ張り出してきました。
何度も読んで内容もしっかり頭に入ってるからなのもあり、あっという間に読了。
やっぱりおーもしろーいなー。(あまりにも好きで、何がおもしろいのかよくわからない状態になってるんだけど)
もう、なんか、血肉です。


ほうれん草のキッシュ、チーズケーキ、ポトフに三色アイス、パンケーキとフルーツの紅茶の朝ごはん、ミートソースのスパゲッティ(!)さえも、ここに出てくる食べ物ぜんぶ食べたい。
時子さんの「木曜日が好き。」から始まる一連のフレーズも、一方では「うわー、歯の浮く台詞だな〜!」って思うんだけど、もう一方では崇拝に近い気持ちを抱いていたりするのである。


映画版も観たいなー。
一刻も早くDVDを観返したいなー。



前の感想はこちら
映画版の感想はこちら
そういえばここでも映画版の感想を書いてました


ニックネーム 三森紘子 at 21:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 活字・恩田陸

2008年09月30日

終わりは始まり 〜恩田陸「エンド・ゲーム 常野物語」



怖かった。
恩田陸の小説はみんな怖い。
ものすごい怖がりのくせに、恩田陸の描く怖さだけはすすんで味わおうとする自分がよくわからない。


私たちは薄皮一枚で守られた世界に住んでいて、普段はそんなこと意識せずに生活しているけれど、ふとした時にその薄皮を透かし見てみると、おぞましいもの、優しくないもの、残酷なものがひそんでいることに気づく。あるいはそれは、自分自身の醜さであったりする。
見ないだけ、考えないだけで、それは常にそこに在る。
そういう、「知らなければよかった」「知らなかった頃にはもう戻れない」という類いの怖さ。
人は何故「怖いものを見たい」と思うんだろう?


『裏返す』『包む』『洗濯する』といった言葉がおそろしい意味を持つ物語。
登場人物たちが遡る、夢のような、記憶の中の無意識の世界で現れる、長い長い卓袱台に、こちらに背を向けて座っている老婆や、銀の輪回しをしている少年や、横木が×印に交差された鳥居や、窓も入口もない建物。
幼い時子の体験した出来事は、自分の目で見たわけじゃないのに、トラウマになってしまいそう。
「聖家族」なんて言葉がポンと出てくるような、輝かしく美しい、それなのにとてつもなく不穏なラスト。


うん。恩田小説を一言で表すなら、私はやっぱり「不穏」を選ぶ。
穏やかでない胸のざわめきは、良くも悪くも予感につながっていく。
物語の予感に。


「誰も 見たくないものを 見たくないからだ」
なるしまゆりの漫画の中にこういう一文があったのだけど。(うろ覚えですみません)
読み終わったとき、この一文をふと思い出した。
(上に書いた「薄皮云々」というのも、なるしま漫画に出てきた表現だったような気がします)



なんだか全然内容の紹介になってなくてごめんなさい。
特殊な力を持った一族の戦いを描いたシリーズの中の一作です。
サイキック物、と呼んだらいいのかな…。それともファンタジー?
同シリーズの他作品(「光の帝国」「蒲公英草紙」)も以前読んでるはずなんだけど、どんな話だったかなぜか記憶がない。
『裏返す』っていう言葉がすごく怖かったのだけ覚えてるんだけど。
恩田小説は少しごぶさただったので、これを機に再読してみようかな。
ニックネーム 三森紘子 at 13:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 活字・恩田陸

2008年06月09日

人生は即興芝居 〜恩田陸「猫と針」



「こんなふうに、誰にも気付かれず、みんなに見過ごされて、なかったことになって忘れられていくことってどのくらいあるんだろうね。」



「人は、その場にいない人の話をする。」
喪服を着た男女5人が部屋の中で話をしている。
彼らは葬式帰りであるらしい。彼らは30代で、高校時代の同級生であるらしい。
死んだのはやはり彼らの同級生であるらしい。彼らが話しているのは、その場にいない人の話、らしい。


「演劇集団キャラメルボックス」という劇団のためにかきおろされた、恩田陸の初戯曲作品。
実は昨年、東京まで上演を観に行きました。
なので、そのときの芝居を思い出しながらこれを読んだわけで、この戯曲単体が面白いのかどうかは正直よくわからない。戯曲は読み慣れていないし。
でも言えるのは、「恩田陸の書いた戯曲だなぁ!」ということ。台詞から展開から何から、すべてが恩田恩田している。


あとがきでも、周りから「小説っぽい」「小説を書く人の芝居」とさんざん言われた、というようなことが書いてあった。
実際に、同行した芝居好きの友人も、「やっぱり『初めて書いた戯曲』って感じ。元々小説家の人だから、言葉の選び方が芝居っぽくない」と言っていた。
その友人の感想は若干否定的なニュアンスを含んでいたのだけど、それがいいことなのか悪いことなのか、芝居に対して門外漢の私にはよくわからない。
単純に、「恩田陸の世界が動いてる〜!」という感動だけで興奮したし、楽しめました。


キャラメルボックスのお芝居を観ること自体が初めてだったので比べられないけど、元々この劇団のカラーというのは全然違う爽やかなものであるらしいです。
劇団のファンの方はどういう感想を持ったんだろう。


解決したようで何だかモヤモヤが残る終幕。
登場人物の一人が言うように、「そして人生は続く」。わかりやすい「解決」なんて本当はないのである。


タイトルから先に決まっただけあって、「猫」も「針」も内容には直接関係ないけど、めちゃくちゃ不穏な組み合わせでよいタイトルですね。


「葬式って、一種のコスプレなんだな。」
「喪服は舞台衣装?」
「実際、演技するもんな。」
「そう。主役は亡くなった人のほう。あたしたちは脇役。みんなで悲しみと記憶を共有する。共同幻想、一種のファンタジーね。」
「ドキュメンタリー風の、ね。」



役者でなくても、人はさまざまな場面でそのときにふさわしい自分というものを演技している。
台本ナシの即興芝居。生きるってとってもスリリング。
ニックネーム 三森紘子 at 11:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 活字・恩田陸

2008年03月14日

物語の予感 〜恩田陸「いのちのパレード」

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お久しぶりの恩田陸。今回は短編集。
図書館で予約してたのですが、思ったよりも早く順番が回ってきました。


恩田陸の短編は、まるで予告編のようだなぁと思う。
「映画は予告編が一番面白い」というのはよく使われる言い回しで、私もある意味ではその意見に賛成です。
何故かというと、予告編には「予感」が存在するからだと思う。
小出しにされるエピソードから、シーンの断片から、印象的な台詞から、そこに隠されていてまだ見ることのできない大きな物語を想像し、胸のワクワクが止まらなくなる。
実際の本編が、期待通りか、その反対かは、作品によるけれど(笑)。
予告編というものは、おおむね面白いものなのです。その映画を観てもらうに作ってるものなんだから当たり前といえば当たり前なのですが。


恩田さんの短編には、いまだ語られない部分の予感に満ちた、たくらみのようなものを感じることが多い。
一応、短いお話として完結はしてるのだけど、いやぁまだあるんでしょうその先が、まだ言ってないことがあるでしょうホラ、と詰め寄りたくなるような。
物語を書き始める前に、恩田さんはまず「その物語のポスター(手書き)を作る(まるで映画の宣伝ポスターのように)」のだというエピソードを知ったときは、さもありなんと思った。(今でも毎回そんなことされてるんだろうか…こんなに多作なのだし、さすがにムリかな?)


以前に読んだ、同じく短編集の「朝日のようにさわやかに」のときは、全部の感想を書けなかったので、今回はがんばってすべての話に一言感想をつけました。
長いので興味のある方だけどうぞ↓



続きを読む
ニックネーム 三森紘子 at 22:19| Comment(0) | TrackBack(2) | 活字・恩田陸

2007年12月28日

失いながら生きていく 〜恩田陸「まひるの月を追いかけて」

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文庫版が出てから買うまでに、何故かすごく間が空いてしまった。


恩田陸の書くものが好きで、文庫になったらできるだけ買うようにしているのだけど、どれもこれも全部買うというわけではないです。
たとえば「月の裏側」とか「常野シリーズ」とか本屋大賞に選ばれた「夜のピクニック」とかは、私はあまりピンとこなかった。面白くないわけじゃないんだけど、何度も読み返したいという感じではなかったのです。
まあ、これだけ多彩なジャンルを網羅している作家さんなので、やっぱり作品によって好き嫌いは出てくるんだろうなと思う。


で、この「まひるの月を追いかけて」は、「買う」と「買わない」の間のゾーンを長いことフラフラさまよっていた作品でした。何故かは不明。
図書館で借りた本を返しちゃったらもう読む本がないぞということで、ようやくこないだ購入に至りました。でも結局読む時間がそんなに取れず、図書館の本も貸出延長したのでまだ家にあるという…。


舞台は古都・奈良。
行方不明になった異母兄を探しに、兄の恋人と二人で奈良へ旅する「私」。
旅先で二転三転する事実。これは兄とその恋人との物語で、自分は脇役だと思っていたのに、実は知らぬ間にスポットライトが当たっていたことを知らされる。
一体この旅はどこに行き着くというのか。いや、そもそも終着点などあるのか。


とりあえず、読んでるうちに猛烈に奈良に行きたくなります。
奈良行きたい。大仏に圧倒されたい。近鉄に乗ればすぐ行けるのにいまだに見たことないってどういうこと。


そしてそんな非日常の地で語られる出来事は、今までうやむやにしてきた真実をまるごと暴きだそうとする。
どんでん返しの繰り返し、最高のヒキでいつも次章へ。え? え!? どういうこと!? となりながらページをめくる。


「旅は、お話なのだ。」と、この物語の語り手である静は言う。
旅の前日に憂鬱になるのは、旅が一つの虚構だから。そこで自分は、与えられた主役という役割をこなさなければならないから。
普段日常では誰か主役を演じる人の傍観者でも、旅先ではそうしてはいられない。傍観者でいることを許されない。
なら、出不精の私はひょっとして主役になることを恐れているんだろうか。


生きているかぎり、私の物語の主役は私でしかないんだけど、ふとそんなことを考えたりしました。
たぶん、「非日常」があまり好きじゃないんだろうな。
ルーティンワークがそんなに苦にならない。
だから、「日常」にいながら他人の「非日常」を楽しめる本や映画は、私にとって最高の娯楽だ。
そんな人生でもいいじゃないか。いい…ですよね?(なぜか質問調)


だから、この旅の物語もまた、最高の娯楽でありました。
「あたしたちは何かを失いながら生き長らえるのに、心は重くなる一方だ。」
という静のモノローグが印象的です。
ニックネーム 三森紘子 at 21:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 活字・恩田陸

2007年11月27日

夜を経て 〜恩田陸「木洩れ日に泳ぐ魚」

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久しぶりに恩田陸の小説を読みました。
図書館の返却期限が迫っているので、急いでサラッとめの感想を…


恩田さんの醸し出す「不穏な空気」がやっぱりすごく好き。
今回も、第1節のラスト一行で「きたきた〜!」と気持ちが盛り上がった。


人間は所詮、腹の中では何を考えているかわからないよ、というのがまずあって、そういう表に出さない、しんと冷たい部分を書いている。
でも、「いやだなぁ」とはならずに、「ああ…わかる」と思ってしまうのは、その書き方に温もりを感じるからじゃないかと思う。「冷たい」のに「温もり」って変な感じだけど。


やっぱり誰にでも、そういう冷たい部分、エゴの部分は多かれ少なかれあるんだと思うし。
ヒロが、自分の感じている罪悪感や自己嫌悪すらも「計算」なのだと自覚する描写は、すごくよくわかってしまった。
だから、私もそういう自分を持っているのだろう。


この作品でさらけ出される人間の陰の部分は、コワイけど、不思議と暗い気持ちにはならない。
むしろ一仕事終えたあとのような、嫌なものを全部出しちゃってスッキリした感じや、徹夜明けの妙なハイテンションにも似た、爽快感と昂楊感に包まれる。


閉じた部屋での一晩が過ぎ、朝が来て、世界というのはこんなにも広いところだったのか、と驚くアキ。
傷ついて傷つけて壊して卑小な自分を明るみにして、得たものは新しい世界への解放。
止まらず泳ぎ続ける魚のように、彼らは部屋を出て、歩いていく。きっとこれからも、絶望と安堵を繰り返しながら。


と、そういう諸々はおいといても、一組の男女の心理戦、会話劇として、とても面白く読めました。
ミステリ要素が入っているのでドキドキしたり、驚いたり。
いつもながら恩田さんの謎の提出の仕方はとっても好みです。
ニックネーム 三森紘子 at 23:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 活字・恩田陸

2007年07月21日

恩田陸「朝日のようにさわやかに」を読んだ。

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図書館での予約がやっと回ってきました。
恩田陸の短編集!


恩田さんはいつも長編やシリーズ物を書いてらっしゃるイメージがある。
短編は単行本にまとまるのも時間がかかるし、よけいにめずらしいなぁという感じだ。
本書には、14の短編が収録されています。


なんというか、ホラー系の話が多い。
夜に読まなくてよかったと結構本気で思う。
でもすごく面白い。ホラーは苦手だけど、私がまだ好きなタイプのホラーを恩田さんは書かれる。
感覚的というか、「なんだかわからないけど怖い」ものの書き方が上手いのかな。
たとえるなら「幽霊」よりも「妖怪」な感じ。このたとえも感覚的でうまいたとえになっていない気がするけど…
因縁がない感じかな? よくわからないけどとりあえずそこに在って、在ること自体が怖いという。
だめだ…説明するのを挫折した。


全部の感想は大変なので、特に気になったお話だけのプチ感想↓


・「水晶の夜、翡翠の朝」
水野理瀬シリーズの番外編で、ヨハンが主人公。
非道なヨハン君が素敵。(あとがきでは「邪悪」と評されている)


・「冷凍みかん」
絶対に解凍したり傷つけたりしてはいけない冷凍みかんの話。
淡々とした文体がよけいに怖かった。


・「深夜の食欲」
この中で一番怖かった。
特に、ワゴンに子どもの手がとかいうくだりは、内心ぎゃあああーー!となりました。
タイトルもラストも怖いよー。


・「おはなしのつづき」
辛い…
悲しいです。この話は。


・「楽園を追われて」
四人くらいの人間が集まって、色々としゃべるお話が好きだ。殊に、恩田陸の書いた。
「猫と針」(恩田さん脚本のお芝居!)がますます楽しみ。


・「卒業」
何の状況説明もされないまま終わってしまう話。
怖い! 怖いよ。
一体何から卒業するというのだろう。


・「朝日のようにさわやかに」
エッセイのような小説のような表題作。
洒脱だなぁ。



うーんやっぱり恩田陸好き。
もっともっと彼女の文章を読みたい。
ニックネーム 三森紘子 at 23:48| Comment(0) | TrackBack(1) | 活字・恩田陸

2007年06月04日

虚構が私を見つめる 〜恩田陸「中庭の出来事」

中庭の出来事

またもや恩田陸に幻惑されっぱなし。


タイトルどおり、出来事はすべて中庭で起こる。
脚本家の死。女優の死。若い娘の死。
役者によって演じられる芝居が繰り返し挿入され、何重もの入れ子構造になっていて、何が現実なのか、何が虚構なのかが曖昧になっていく。
ネタバレになるのであまり内容には触れられませんが…


読んでいくうちに、頭がどんどん混乱していった。
気軽に一気読みできるような分量でもないし、細切れに読んでいたから余計に混乱した。
私の理解力がないせいもかなりあるだろうけど、これは明らかにわざと混乱するような書き方をしてるんだと思う。
そう割り切ってからはぐんぐん引き込まれていって、最後の方はページをめくる手が止まらなくなった。
晩ごはん前でおなか空いてたけど、読み終わるまではガマンした。
これをつきつめると、「寝食を忘れて」という状態になるんだろうな。一度はその境地までいってみたいものだ…。


これは「恩田陸という人が書いた小説」だとわかっているから、当然、「ここ」で語られていることはすべてが虚構だ、と私たちは承知して読み始める。
そして、物語の登場人物たちは、当然自分たちのいる「ここ」が現実であると思って行動している。と、私たちは認識している。
けれど、彼らが自らを虚構だと自覚しているとしたら。その上で、彼らに注がれている私たちの視線に気づいているとしたら。
こちらが一方的に観ているだけだと思っていた相手に、実は同じように観られていた…というのは、かなりギクリとさせられる。


なので、この終わり方、私はかなり好きだった。
すっきりくっきり、なラストでは全然ないけど、もう鳥肌ものでした。
恩田さんは本当にプロフェッショナルだなぁと思う。才能というものの底が知れないや。


1回しか通読しないのは、かなりもったいない感じ。
でも、もう図書館に返却しなきゃいけない。
文庫化されたら買って、もう一度読もう!と思う。
去年の秋に出たばかりだから、文庫化はいつになるやら…ですが。


終盤、年齢も生い立ちも違う3人の女優が、わいわいと喋っているところがすごく好きだった。
女どうしの関係に「共犯関係」という言葉を使うのは、なんてしっくりくるんだろう、と思う。
これは、あくまでこの小説に関して感じることだけど。現実に自分の友人関係を考えてみると、そういうわけでもないなぁ。


ちなみに、この作品はケータイ文庫で連載されていたものらしい。
このややこしい話を携帯で!? 本で読むより数倍混乱しそう…。
ニックネーム 三森紘子 at 21:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 活字・恩田陸

2007年04月28日

少女幻想 〜恩田陸「黄昏の百合の骨」

黄昏の百合の骨
これも文庫になったので購入。


「美少女」という言葉に対する私のイメージはというと、長い黒髪が綺麗で、大人びていて、目力があって、日の光より月の光が似合って、無垢に見えるが既にその身に「女」を住まわせていて、そんでもって強い芯を持っているけれど一方で危うさもあって……と考えていくと、あれ、それってまんま水野理瀬のことじゃないか、と気づく。


水野理瀬は、恩田陸の小説「三月は深き紅の淵を」「麦の海に沈む果実」「黄昏の百合の骨」に登場する少女である。
自分の持つイメージが先だったのか、この水野理瀬が先だったのか、もうわからない。
それぐらい、私の中で「美少女のイメージ」と「水野理瀬という人物」はイコールで結びついている。


そう、美少女とは決して聖なる少女ではない。
心の内に誰とも相容れない闇を持ち、それ故に見る者を虜にする抑えがたい魅力を放つのだ。
※あくまで私のイメージです。自分でも何書いてるのかわかんなくなってきた。


近隣から「魔女の家」と呼ばれる百合の匂いに包まれた洋館には、美貌の叔母が二人住んでいる。
高校生の理瀬は死んだ祖母の遺言に従って、その館を訪れる。
館では、疑心暗鬼になりながら誰もが何かを探していた。


こういうドロドロした話、あんまり得意じゃないのだけど、何で恩田陸だと読めてしまうのか。
昼ドラとかも苦手なのに。
でもこれは、昼ドラというよりはむしろ昔の少女漫画といった趣だ。(昼ドラも少女漫画っぽいといえばぽいんだけど…)


基本、登場人物が皆美形というのもそんな感じ。
ありえんくらい素敵な殿方や病弱な少年や一途故に残酷な少女や性倒錯者なんかが登場するのにふさわしい世界設定なのだ。
あとインセストも。
私は、亘と迷うけど雅雪が一番好きかなぁ。彼らのまっとうな感じが。


北見隆の挿画があまりにもマッチしていて、もう感動してしまう。
最初にこの人の絵に出会ったのは、中学だか高校だかの国語の教科書の表紙だったと思うんだけど、独特の雰囲気が大好き。


これ、理瀬の話はまだ続くんだろうけど(もう続編発表されてたっけ?ちょっと忘れた)、少女時代と訣別した理瀬がどれほど美しく成長していくのか、どんな道を歩んでゆくのか、気になりまくりです。
まだ彼女らのバックボーンは詳らかにされていない部分が多いので。


いずれにしても、それは黄昏時のようにほの暗く妖しく、それでいて華麗なるけもの道となることだろう。
※いよいよ本格的に何を書いてるのかわかんなくなってきた。自分は一体どこへ行こうとしてるのだろう。
ニックネーム 三森紘子 at 01:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 活字・恩田陸

2007年04月18日

怖いけどやめられない 〜恩田陸「Q&A」

Q&A
文庫で出ておりましたので、即買いました。
好きな作家の本に関しては、図書館で借りる→文庫化を待って購入、という流れが定着している。
全部が全部そうというわけではないけど。恩田陸の本でも、所有していないのは結構ある。
多作な方だからなぁ。嬉しいけど。


この本はタイトルが示すとおり、Question(質問)とAnswer(答え)のみで構成された小説だ。
地の文は一切なし。
章ごとに人物は入れ替わるが、常に誰かと誰かの会話だけで物語が進んでいく。


とある大型ショッピングセンターで起きた、未曾有の大事故。
多数の死傷者を出したにもかかわらず、事故の原因はわからないまま。
一体その日にその場所で何があったのか。
そしてこの事故はその後どのような波紋を広げていったのか。
幾度となく行われた被害者・目撃者への聞き取り調査により、次第に事実が明るみになる……かに見えたのだが。


感想
おもしろい。でもめちゃくちゃ怖ええええ。


一つの事件に対してさまざまな角度から真相を突き止めていく、というスタイルでは、宮部みゆきの「理由」を思い出す。
(あれもものすごく面白かった!)
でも、「理由」では最後は真相にたどり着いたのだが、「Q&A」でははっきりとした真相はわからないまま終わってしまう。
後味の悪さというか、薄ら寒さを感じる点では「Q&A」の方が断然怖い。


一対一の会話で話が進むのも怖い。
会話を続けていくうちに、回答者のみならず質問者の内面まで浮き彫りにされていったり、いつのまにかお互いの立場が逆転していたりする。
この辺が作者の腕の見せ所という感じ。
先が気になって、空恐ろしい心地がしているのに読むのを止められない。


「家に帰るのが怖い男」のエピソードが一番怖かった。
以前に読んだのは何年も前だけど、このエピソードだけはかなり鮮明に覚えていた。
何が怖いって、この男の気持ちが少しだけわかってしまうんだもの。
私も、何かの歯車が狂えば、同じようになってしまうんじゃないか…って。
うわああん。
(なぜ家に帰るのが怖いのかは、読んでからのお楽しみということで)


本当に、なんでこんなお話が書けるのかなぁと脱帽する。
それは恩田陸に限らず、優れたストーリーテラー作家すべてに対して思うことだけれど。


いつもいつも上質な読書体験をさせてくれて、ありがとう恩田様。
次は「黄昏の百合の骨」だ!
ニックネーム 三森紘子 at 20:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 活字・恩田陸

2007年02月10日

少年たちの昼と夜 〜恩田陸「ネバーランド」

ネバーランド
恩田陸の文章は何度もたくさん読んでいるから、しっくり来すぎて、自分の血肉になりすぎていて、逆に鼻についたりしてきたのだが、やっぱり何度も読んでしまう。ああ。

ずいぶん前にドラマ化もされているこの「ネバーランド」は、タイトルの示すとおり、お話の中には存在しているけれど現実にはどこにも存在しないような、「架空の国(第七章のタイトル)」の物語である。
冬休み中の名門男子校の寮が舞台で、居残り組の3人+1人の高校生が過ごす七日間を描いた、学園小説。

あとがきでも触れられているが、確かに彼らはさわやかすぎる!
猥談も申し訳程度にしかしないし、酒やタバコはやってるけど、女が持ってる幻想の中の男子高校生って感じだ。
でも、それがいいっす。
名作漫画「トーマの心臓」を目指して書かれたそうだから、当然か。
死んだ同級生の幽霊が出るとかいうくだり、確かにトーマを彷彿とさせる。

ミステリ風味が入っているのでそのあたりも読んでいて楽しい。
カードで負けたら「告白」か「実行」かを選ぶ「告白ゲーム」をやったり、「告白の中に一つだけ嘘を混ぜること」というルールを作ったりと、それなりに緊迫した心理戦もあって、どきどきしつつ読みました。

それぞれの少年たちの、学校では隠していた陰の部分や秘密が露呈していくのだが、昼ドラみたいなドロドロしたことが起こっているのに、読後感はさわやかである。
寮という特殊な空間、しかも冬休みという非日常の中で語られるからだろうか。

料理上手な光浩がいるおかげで、今回も「木曜組曲」同様に食事シーンが美味しそう。


ドラマも観ていたが、連ドラ用にかなり話をふくらましてあった。
原作では死んでる人やいない人が登場したり、冬の話なのに真夏が舞台になっていたり。
美国(今井翼)がすごいモテモテの設定で、ちょっとなぁ…と思った(翼くんは昔から応援してますが)。
まあまあ面白かったけど、あれはアイドルドラマだったなー。

いま読み返したら、4人のその後を見てみたくなってきた。
ネバーランドを後にし、大人になった彼らの話を恩田先生、書いてくれませんかねー。
ニックネーム 三森紘子 at 18:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 活字・恩田陸

2006年12月18日

木曜日の大人のミステリ 〜恩田陸「木曜組曲」



恩田陸の会話劇が好きだ。
「木曜組曲」は、舞台はほぼ一軒の家の中のみ、決まった登場人物の会話だけで終始物語が展開される。


耽美派小説の巨匠、重松時子が薬物死をとげてから4年。
毎年集まる、時子にゆかりのある5人の女たち。
彼女らには、他の4人にも言っていないそれぞれの秘密があった。

この5人の女たちは、それぞれ自立して仕事もそれなりの地位を築いているのだが、とにかくよく食べ、よくしゃべる。
おいしい料理を歓声をあげながらみんなで囲み、他愛ないおしゃべりをするうちに、話題は誰も多れようとしなかった方へと進んでいく。
すなわち、重松時子はなぜ死んだのか。


順番に5人それぞれの視・が描かれるのだが、誰もが他に対して実は油断をしていないのがわかって面白い。
最後の推理が導きだされる様子は、読んでてぞくぞくした。
女って面白くて怖い。
十年後、二十年後は、こんな大人の女になりたいなーと高望みをしてみる。


4年くらい前に、篠原哲雄が監督で映画化されているのだが、これがすごくよかった。
原作つきの映画はがっかりすることの方がやっぱり多いんだけど、これはもう一回観たいくらいだ。
ラストが小説と違ったのだが、それもまたアリだと思わせる。
出てくる料理も、それを食べてるシーンもおいしそうだったし。
鈴木京香や西田尚美が出演していたのも個人的によかった。

書いてるうちに映画をすごく観たくなってきた。
DVDで借りれるかな。
あ、でも今プレーヤーがないからビデオの方がいい。ビデオで出てるんだろうか。
ああ、観たい。
ニックネーム 三森紘子 at 21:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 活字・恩田陸

2006年11月23日

耽溺。〜恩田陸「三月は深き紅の淵を」

三月は
この本に出会ったのは高校の図書館で。
画像はその後自分で買った文庫版。

どうしても読めない本というのがある。
ストーリーやキャラクターはとても魅力的なのに、読み続けるのが困難な本(もったいない!)。
たぶん、文体に入っていけないのだと思う。
そういう意味では、恩田陸の文体は私好みだ。すらすら入ってくる。
ほとんどの既刊を読みあさっていると思う。

使う題材も好きなものが多い。
謎、推理、学園、少年少女(特に美少女)、群像劇、会話劇、等々。
「自分が読みたいと思うものを書いている」といろんなところでおっしゃっているから、恩田さんって作家である前に読者なんだろう。
多作なのもうれしい。

この「三月は深き紅の淵を」は、同タイトルの本をめぐる四部作の小説だ。
最初の章に出てくる、みんなで集まってただただ読書をして過ごす四人の老人たちがうらやましい!こんな老後をぜひ送りたいものだ。

全然すっきりしない終わり方だけど、読まずにはいられない。
むしろ、すっきりしちゃったら面白くない。

本を読む行為という個人的でちょっと背徳的な悦びを、作者と共有できたような気にさせてくれる一品。
ニックネーム 三森紘子 at 21:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 活字・恩田陸